綺麗なお兄さんは好きですか-ボルト編-《没バージョン》2


ボルサス(ボルト⇒サスケ)原作ベース
いったい何が書きたかったのかを見失ってしまった良い例orz
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 サスケは毒舌で、子供相手でも容赦なくてボルトにとって最初の印象は最悪だった筈だった。
 それなのに、陽の光の中で。その容貌を見た途端、心を奪われてしまった。我ながらなんと単純なのか、と呆れてしまうボルトだ。
 それでも、だ。
 離れたくないと感じてしまった、その心にボルトは忠実に従った。
 だから、それに気付いたのはサスケの後に付いて里へと向かっている途中である。
「あ……うちは、って……もしかして……」
「なんだ」
「うちは、って……サラダの父ちゃんかってばさ?」
「……そうだ」
 がーんがーんがーん。
 予想はしていての問い掛けではあったのだが、実際に肯定されると大槌で頭をぶん殴られたのかと思うくらいの衝撃が頭に走った。
 一言で言ってしまえば、こんなに綺麗なのにオレと同じ歳の娘がいる父親なのか、と。
 父ちゃんとは大違いだってば、と思わず比べてしまう。
「えーっと……」
 聞きかじりの記憶を必死になって蘇らせる。
 確か、サラダの父ちゃんてばオレの父ちゃんと同じ歳で同じ班で父ちゃんの親友で一緒に闘ったら凄いってサラダが言ってた、と。そこまで思い出してハタと気付く。
 うちはサスケなら先ほど洞窟で抜け忍の集団をたった一人で殲滅させたのも道理である。
 それほどに凄い忍なのだ。
 ボルトの父親が一目置くほどの忍である。
 ならば――。
「頼みがあるってばさっ」
「頼み?」
「オレを弟子にして下さいってばさっ」
 この時点で最初に会った時、弱い忍に違いないと思い込んでいた自分の事は何処か彼方へと飛び去っている。
「……」
「オレってば強くなりたいってばさ。父ちゃんよりも誰よりも強くなりたいってばよ」
「誰よりも強くなって……ナルトの跡を継いで火影になるか?」
「オレは火影に……なりたくもねェ!」
 ボルトは未だ『火影』に対して父親を自分から奪った、と。そういう認識しか持てないでいる。思わず吐き捨てるような口調となっている。
「ほぅ……確かにお前はナルトとは違うようだな」
 ボルトの口調から何某かを感じ取ってサスケは一人ごちる。
 しかし、だからとはいえお願い内容が内容である。はいそうですか、と頷く訳にはいかないものであるのは確かだった。
 それにサスケは何時解決するとも知れない任務の最中だ。しかも、それは木ノ葉の里に居て務まるものではない。
 もし、ボルトの申し出を受けるとなると自然ボルトはサスケに付いて木ノ葉の里を出て諸国を巡ることになる。
 確かにナルトもボルトの歳に自来也へと弟子入りし、自来也に付いて諸国を巡りながら修行をしていた。とはいえ、ナルトとボルトとでは事情が全く違う。
 ナルトのそれは身の内に九尾を飼っていた事で、その身を暁という組織に狙われていた為にそうせざるを得ない状況が発生したからだ。もしナルトがごく一般の忍者に過ぎず諸国遍歴の必要性無しと判断されていれば、そういう事態は起きなかっただろう。――何しろ意外性ナンバーワン忍者の事であるから断言は出来ないのだが。
 ボルトに九尾は封印されていない。
 世の中も概ね平和である。
 その状況の中でボルトがサスケに弟子入りし諸国遍歴をしてまで修行する意味があるか、と言えば否という答えが返るだろう。
 あくまでも……サスケの任務は極秘事項に属する。平和な世の中にわざわざ不安要素をばらまく必要などないという意図の元に動いているのだ。
 そんな中では何かの脅威に対して個々の忍の力量を上げていくという試みにも限度があるという話だ。
 いくら本人が望んでいたとしてもという話である。
 ヘタをすれば一人だけ特別扱いをしている等、謂われの無い中傷の対象になりかねない。
 特にその辺、ボルトは立場が微妙であると言っても良い。
 火影の息子であるが故に、依怙贔屓されているという認識に他者は陥りやすいのだ。
 当事者達に全くそのつもりがないにしても……という話である。 そういう点ではボルトは可哀想な子供ではあった。他者に比べて気を遣わなくてはならない場面というのが多い。
 尤も本人に火影の息子であるという驕りがないだけ未だマシではある。
 寧ろ火影の子供であるということを毛嫌いしていると言って良いのはボルトを知っている者であれば、皆知っているかもしくは感じている事である。
 そんな状況をサスケが把握している訳ではなかったが、それでも火影の息子という立場でサスケと共に修行の旅に出るというのは難しいだろうと――ナルトが許可を出したとしても日向側が納得しないだろう――サスケは感じている。
 それに……柄ではないのだ。
 一族郎党ことごとくを失ってからのサスケはほとんど一人で過ごして来た。
 別に一匹狼を気取っていたわけではない。
 ただ、幼い頃は復讐者として自分を律する為には周囲からの暖かく差し伸べられる手に縋る事は出来ないと自らを戒めており、言ってしまえば突っ張っていた訳だ。必死に虚勢を張っていたと言っても良い。
 一度でも縋ってしまえば、駄目になる。
 人間は弱い生き物だ。
 誰しもが容易い道へ、生きやすい道へと流れていく。
 これはもうどうしようもない事だ。
 人間である限りは、自らを戒め常に律していなければ直ぐに楽な方へと流される。
 サスケがある意味不幸だったのは、そういった意思の力といったものをサスケが人並み以上に持ち合わせていた、という事だろう。
 忍たるもの一般人より、そういう意思力というものは上であるものだ。だが、サスケはその中でも図抜けて自身を律するための意思の力というものが強かった。
 だからこそ、里抜けという暴挙をしてまで強さを求めたとも言える。
 そんな状況で培われた性格だ。
 確かに三つ子の魂百までというように根底のサスケの性質は優しい。それに伴って人を思いやるという事も知っている。元々の性格は真っ直ぐであり、人に甘えるという行為も充分にしてきた末っ子である。言ってしまえば弟気質なのだ。
 とはいえ、七歳以降激変した己の周囲に合わせて生きていくしかなかった子供だ。
 優しさは奥の奥へと仕舞われて分かり難くなり、甘えるという行為からは自ら遠離った。
 だから、一人でいるという事が平気になった。
 寧ろ、一人でいる方が落ち着く。
 時に人恋しいと思わない訳ではない。
 だが、それ以上に一人でいるという事に慣れきってしまったのだ。
 なので、今更人と一緒にいろ、と言われても落ち着かない。
 況してやそれが子供である。
 大人でも長く一緒にいるという事は苦痛しかもたらさないだろうに、その相手が子供となると己がどういった行動に出るのかが全く想像すら付かない。
 懸念するより容易く共にいられるのかもしれなかったし、数時間で限界が来てしまうかもしれない。
 全く想像の範疇外で予測の付けようがない。
 サスケからすればボルトがサスケへの弟子入りを望んでも里がそれを却下するという流れが一番望ましい。
 だが、それを今口にしてしまえばまたこの子供が煩くなるのは分かりきっている。なのでサスケは子供の申し出について敢えて触れないままに里への道を行く。
 別に急ぐ訳でもないので普通に山道を歩いている。
 と、前方から慌ただしい気配が迫っているのに気付いた。
 規模からすればフォーマンセルが三つか四つか。サスケが気付いて数十秒後ぐんぐん迫って来ていた集団はサスケとボルトの二人に気付いたのだろう。樹上の移 動を止めて二人の前に立つ。もちろんボルトが気付いたのは、その集団が樹上を馳せていたのを止めて二人の前に飛び降りて来た時だ。
 これに関してはサスケの想定の範囲内であるので別段驚きはしない。恐らく、ボルトと一緒に行動していたチームの担当上忍が異変を察知し里へと助力を仰いだのだろう。
 実際、全員が木ノ葉の額当てをしているのを確認する。
 ただ、これが別のボルトを狙う集団ではないという証拠はない。
 身分を偽る事など忍の世界では日常茶飯事である。厄介な事に変化という術すらあるのだ。
 ここでボルトを引き渡すべきかを一瞬サスケは迷う。
 ボルトは一瞬、目の前に現れた集団にぎょっとした様だが、サスケがボルトを庇うように自然と前に出ていくと緊張しつつも最初の驚愕はやり過ごした。
「貴様は何者だ。其処にいるのは我ら木ノ葉の忍。こちらへ渡して貰おう」
「…………………………」
 集団の頭だろう男が居丈高にサスケへと告げる。
 恐らくはサスケの事を知らない忍だろう。別にそれに対してどうこう言うつもりはない。寧ろ知られている方が厄介だとすら思う。一応、サスケの任務は極秘扱いだ。誰も彼もが知っているようでは却って里の情報管理を疑わなくてはならなくなる。
「おい! 貴様聞いているのかっ」
 だが、この高圧的な態度は戴けないな、とそんな感想を抱いてサスケは黙っている。
「貴様、何とか言ったらどうだっ」
「おまえたちが真実木ノ葉の忍であるという証は何処にある?」
「なにっ」
 サスケの返答に集団全員が色めき立つ。
「オレは後ろのガキが抜け忍の集団に捕まっているのを助けた訳だが……助けたからには無事に送り届ける義務があると思っている。途中で何かあったら目覚めが悪いからな。そして悪いが、オレにはあんた達が真実木ノ葉の忍であるかどうかという判断がつかない。せっかく助けたのに救出を装った偽物の部隊なぞに渡して二度手間となるのも面倒だ」
「なっ! 貴様、我々を愚弄するのかっ?」
「別に愚弄しているつもりはない。あんたらに木ノ葉の忍でるという証が示せないのならオレが予定通り、このガキは里まで送り届ける。あんたらはオレ達の後から付いてくれば良い」
「貴様っ……さっきから聞いておればガキガキと失礼な物言いをっそのお子は――」
「七代目火影の息子だっていうんだろう? だから何だ。ガキには違いないだろう」
「――っ」
 サスケへと言いつのる男に対して心底面倒と言わんばかりの態度で男の言葉をサスケが遮る。そのサスケの態度はそこに居る集団にとって鼻持ちならないとしかうつらない。集団の雰囲気が一気に険悪な方向へと傾いていく。
 それを感じ取って更にサスケが面倒臭そうに大きく深く――見ようによっては――これ見よがしに溜息を吐く。
「きっさまぁぁぁっ」
 とうとう堪忍袋の緒が切れたとばかりに先頭にいた男が掴み掛かる。実際は掴み掛かろうとしたのだが、あっさりと躱された。
 なので、より一層集団は色めき立つ。
 ボルトはサスケの背後に庇われながら、一人おろおろとしているだけだ。
 情けないと思ってはいて何とかしなくてはならないと思っている。前に居るのはボルトを助けてくれたサラダの父親なのだ。だが、ボルトが前に出ようとすると男はそれを察知してボルトの方へと向けた手と掌だけでそれを阻止したのだ。
 ボルトには、おまえは引っ込んでろという男の心の声がしっかりと聞こえた。
 ただボルトの前に立っているだけである。
 それでも男の発する気がボルトを威圧する。
 それは二人の前にいる集団においても同様だった。
 サスケは自然体で立っているだけだ。それなのに圧倒される。
 身が竦んで動けなくなる。
 そのことに対して腹立たしい思いを抱えているのだが動けない。
 ボルトの目には一触即発のように見えていたが実際には全員が全員ともサスケの気に当てられてぴくりとも動けないという状況だった。
「オレはもう行く。里へ報せを放つなり好きにしろ。ただしオレの邪魔はするな」
 傲慢といえば傲慢な言い種ではある。
 とはいえ、サスケと集団の間では流石に力量が違い過ぎる事を悟らざるを得なかったのだ。それでサスケに刃向かうというなら、それは何を考える事も出来ない大馬鹿者の集団である。
 確かに任務の遂行は何より優先される。相手との間に大きな力の差があるからといって一度受けた任務において尻込みする事など、本来であれば許されざる事だ。
 だが、今回の場合サスケはボルトの身の安全を最優先とし里まで自ら送ると言っているのだ。サスケが言うようにボルトを連れて行くサスケの後をつけていけばそれで問題はないのである。何も、わざわざ波風を立てて怪我人やら死人やらを量産する必要はないのだ。
 つまり、残るはプライドの問題だけということだ。
 己が受けた任務を他者へと委ねざるを得ない状況が発生した時、それを己のプライドを優先し率いているチームを危機に陥れるか否か。単に集団を率いる者としての己の力量を問われているに過ぎない。
 そして、この集団を纏めているリーダーの男は生憎とプライドが優先してしまう残念なタイプだった。
「このまま行かせるわけにはいかん。我々はボルト様の保護を言いつかっている――かか……っ」
 最後まで言い終える事は出来なかった。
 男には何が起こったのか全く理解出来なかっただろう。
 単に其処にいる誰にも認知出来ないほどのスピードを以てして、サスケが男へと当て身を当てたのだ。
 呻き声一つ上げる事無く頽れる男を嫌そうに軽く受け止めると集団へ向けて放る。
「頭が無能だとおまえ達も大変だな――連れ帰ってやれ」
 慌てて自分達の方へと放り出されたチームリーダーの男を数人で受け取る。
「さっきも言った。オレはこいつを連れて木ノ葉の里まで行く。付いてくるなり一足先に戻るなり好きにしろ」
 全員がこくこくこくと頷くしかない。
 すげーすげーすげーっっっ! すげーってばさっっ!
 背後で一連のやりとりを見ていたボルトは心の中で絶叫している。
 口に出さなかったのではない。出せなかったのだ。
 あまりにも鮮やかなその動きに。格好良さに。
 感動しすぎて声が出ない。まさにその状態だったのである。
「行くぞボルト」
「っ……はいってばさっ」
 何事も無かったかのように歩み始めるサスケの後をボルトは上機嫌で付いていく。
 絶対、絶対、絶対の絶対、弟子入りするんだ、と心に決めながら。
 里までの道のりはやけに近く感じたのだった。
 一方、ボルト救出の命を受けていたチームの方はといえば先に里へ帰る訳にはいかないと一報を投げた後はボルトの更に後ろを付いてサスケに言われた通り付いて行く。
 サスケにはサスケの言い分があるが、もちろん後ろの者達にも言い分はある。サスケが木ノ葉の者達であると百パーセント信じ切れなかったのと同様、後ろの集団にしたらサスケの事が信じられなかったわけだ。
 それは当然の事である。
 だから、サスケにしても後ろを付いてくる事は許したという訳だ。
 別にサスケにしても、この救出チームの連中を苛めたいとか上司からの叱責を受ければ良いとか思ってる訳ではない。
 サスケがボルトを助けたのは単に成り行きに過ぎないのだ。
 言ってしまえばサスケの方がイレギュラーなのである。
 ならば、後を付いて来られる鬱陶しさくらいは我慢してやる、とサスケなりの譲歩だったわけだ。
 それを汲めるるか汲めないか。
 そこがチームリーダーとしての器というものだろう。
 サスケを先頭に、それを追うようにボルトが続く。その後にボルトの救出チームであった筈の集団がぞろぞろ続いての里までの行程である。何も知らない者が行き当たったりしていたらあまりの異様さに腰を抜かしてしまわないまでも怪訝な目を向けられるのは必至だった。
 里の大門が見えた時、誰よりホッと胸を撫で下ろしたのは集団の面々だったろう。
 サスケの力量は自分達より遥かに大きい。全員で掛かっても返り討ちされるのが関の山であると流石に皆が皆悟っている。
 となるとサスケの言が違っていてボルトを連れ去ろうとしたならば、それを阻止するために下手したら命が無かったのだ。全員が全員、ホッとした表情となったのも無理はない。
「ボルトっ」
 その安堵の空気に包まれる中、大門の方から女性が駆け寄ってくる。
「え? あ……母ちゃん……」
 駆け寄って来たのはボルトの母親であるヒナタだ。
 流石に何者かに連れ去られたと聞いてはじっとしてなどいられなかったということだろう。
 駆け寄ると同時にボルトの躰をぎゅっと抱きしめる。
 それは紛れもなく母としての行動だった。
「わ、わ……ちょ、母ちゃん……」
「無事だったのね……良かった……ボルト。何者かに連れ去られたらしいって聞いたから……心臓が止まるかと思った……無事で本当に良かった」
 ヒナタに強く抱き締められて、その口から心底心配していたのだと知れる台詞が紡がれるのに胸がじんと熱くなる。
「ボルト、あなたを助けてくれたって方はどなたなの?」
「あ……母ちゃん、そこに。すげーんだっ、強くて――なんとサラ……」
「サスケくんっ?」
 ボルトの言葉に顔をサスケの方へと向けた途端、ヒナタは目を丸くしてボルトの声を遮って驚きの声を上げる。
「……久しぶりだ。ヒナタ」
 対するサスケは幾分決まり悪そうな表情をする。
「え? 母ちゃん知ってんのか?」
「サスケくんがボルトを助けてくれたの?」
「大した事じゃない。成り行きだ」
「ううん。大した事だよ。だってボルトを助けてくれたんだもの」
「まぁ、お前がそういうならそういうことにしておく。ナルトによろしく言っておいてくれ」
 ヒナタとサスケとのやりとりに驚いたのがボルトを救出するために動いていたチームの面々である。現火影夫人のヒナタと親しい『サスケ』と呼ばれる御仁など一人でしか有り得ない。現火影自らライバルで最も親しい友だと公言して憚らない『うちはサスケ』以外に有り得ない。
 ざわり。
 集団の雰囲気が激変したのが傍に居るとあからさまだった。
「母ちゃんもこの人の事知ってたのか」
「もちろん知ってるよ。サスケくんとナルトくんは仲が良いんだから。母ちゃんと同期だった人は皆知ってるんだよ」
 ね、と相づちを求めてくるヒナタにサスケは苦笑で返すしかない。
 同期の人間はかつての世界を巻き込んだナルトとサスケの大喧嘩の事の顛末を最初から最後まで知っている世代である。
「取り敢えずボルトは無事に送り届けたぞ」
「サスケくん、何処行くの?」
 これ以上の面倒事はごめんだと言わんばかりに、ヒナタへ告げるや踵を返そうとしたサスケだったがヒナタが呼び止める。ヒナタに深い意味は無かった。その時点では。ただ、息子を救ってくれた人に対してきちんと歓待したいと思っただけだ。
 ただ、それがサスケにとってはそうではなかったというだけである。
「あ。そういえばサクラには会わないの? この前、そろそろサスケくんが帰ってくるかもって嬉しそうに言ってたよ?」
 そのサスケの負い目を正確に読み取って、更には完全にサクラの側に立ったヒナタが続けて問う。それこそサスケが一番、触れて欲しくなかった話題を口に乗せた上でである。あたかも、このまま任務に赴くなんて許されない事よ、と告げるがごとく。
「ヒナタ……」
「なに?」
「お前……強くなったな」
「有難う。ナルトくんの奥さんして子供達の母親するのに強くないとやってられないよ」
 ころころと笑顔をサスケに向けてくるヒナタに以前の面影はほとんど無いと言って良い。
 はぁ、とサスケが吐息する。
 どうやら、一度木の葉の里へときちんと入ってサクラとサラダとの対面を果たしてからでないと出発は許されないと悟って。
「さ、行こうサスケくん。ボルトの妹にも会って欲しいな」
「……ああ」
 どうやら、会うのは妻と娘にだけではないらしかった。
 
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