オレの師匠は綺麗で可愛い子だったってばさっ


ボルサス(ボルト⇒サスケ)原作ベース
映画BORUTOのEDでボルト達三人とナルト達7班のイラストが連続で出た途端、ボルトと少年サスケを会わせてみたいっっ!! とか滾り。
なので、会わせてみました! というお話。
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「っどぅっわぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」
「ボルトっ」
「ボルトっっ!」
 仲間二人の呼び声と差し伸べられる手。
 咄嗟にそれを掴もうとしたボルトの手はホンの数ミリ届かなかった。



 暗転。
 気付いた時、そこは地の底だった。
(格好悪ぃ……)
 いきなり足下の地面が消えた。
 恐らくは何らかの罠で。それに見事に引っ掛かってしまったというところだろう。
「よっと」
 寝転がっている状態から身軽にひょいと起き上がる。
 難なく起き上がれたし痛みを感じる事もなかった、ということは幸運にも怪我などせずに済んだという事だ。
「オレってばやっぱちょーラッキーだってばさっ」
 足の下は湿った黒土で、入り口は頭上の遙か上だ。
 少なくともボルトの身長より上にある入り口は手を伸ばしても届く箇所ではない。
 それでは、とボルトはチャクラを足の裏へと集め、壁へと吸着させて登ることを考える。そして実行しようとしたのだが……。
「だぁぁぁぁぁっっ上手くいかないってばさっ」
 どうやらただの涸れ井戸とかの類いではなかったようでチャクラが上手く練れない。つまり対忍用の歴とした罠だったということだ。
 顔を上向けると四角く切り取られた状態の空が見える、という事はかなり深い穴である。
 それを鑑みるに、良く無事だったものだとしみじみしてしまう。
「おーいっ、サラダっ、ミツキっ」
 落ちる直前まで一緒にいたチームの二人を呼ぶ。
 ボルトの意に反して直ぐに返ってくるだろうと思っていた返事は全くない。
「サラダっ、ミツキっ、いないのかっ?」
 再度、名前を呼んでみるが全く梨の礫である。
「ちぇ、なんだよっ薄情者っ! 助けを呼ぶにしても一人は残っててくれてても良いだろってばさっっ」
 恐らくは思ったよりも深かった穴と性質上――何しろサラダは写輪眼持ちである――このままでは救助出来ないと踏んで担当上忍の木ノ葉丸か里に助力を求めに走ったのだろう。
「あーっ、ドジったってばさっ」
 どすん、と座り頭を掻き毟る。
 頭上を見上げる。遙か上に位置する穴の入り口まではとっかかりになるような足場はない。いっそ、地面に突き立った串刺し用の先の尖った棒状のものが植えられて無かった事を歓ぶべきだろう。
 ともかく、助けが来るまではすることもない、とボルトは地面へとばたりと仰向けに転がった。
 四角く切り取られた穴の入り口。そこからは遙か彼方の空が切り取られて真っ青だ。その青さに目を眇める。
「おい、誰かいるのか?」
 と、いきなりその一角に人影が差す。逆光になっていてシルエットだけだが自分と同年代のように思えた。
「わっ、いるっ、いるってばさっ」
 ガバリ。
 飛び起きて仰向き、両手を大きく広げて助けを求める。
「……」
 と。ひゅん、という風を切る音と共に穴の縁から縄が投げ下ろされる。
「登ってこい」
「おうっ」
 忍にとって縄を伝って登るなど初歩中の初歩といって良い。ボルトは難なく縄を伝って地上へと生還したわけである。
「はぁぁ……助かったってばさっ。サンキュー……」
「そうか」
 ボルトに背を向ける格好で黙々と投げ下ろした縄を回収しているのはボルトが穴の底で感じた通り同年代の少年だ。つんつん跳ねた後ろ髪が特徴的で一見、身の丈に合っていないような大きめの青い服に鮮やかな〃うちは〃の家紋が染め付けられている。
(あ……〃うちは〃の――って……〃うちは〃の子供って今、サラダしかいないんじゃ)
「じゃあな。今度は落ちないように気をつけて帰れ」
「あ……ちょ、ちょっと待てってばさっっ」
 縄を回収し終えたのだろう少年がそのまま別れの挨拶を告げて寄越すのにボルトは慌てて差し止める。
「なんだ?」
 そうして……ボルトへと振り返った少年の面差しが見知った誰かに重なりはしたのだが、それがいったい誰であるのかが思い出せない。
 そんなもどかしさの中でボルトは疑問に思ったことを尋ねる。
「えっと……お前、〃うちは〃一族?」
「……そうだが」
 それがどうしたと言わんばかりの少年の口調にボルトは一瞬、むっとする。
「お前も木ノ葉の忍か?」
 恐らくはボルトの額当てを目にしての問い掛けが続けられるのに取り敢えず、その心象はおいておくことにする。
「そうだってばさ。お前も……だろ? たぶん、同年代だよな? でも会ったことないってばさ」
「そうだな」
 だがそれがどうした、といった少年の態度である。
「その、〃うちは〃の一族の子供ってオレ、サラダしかいないって思ってた」
「サラダ?」
 誰だそれは、といった調子で返されてボルトは戸惑う。
「サラダだってばさっ、うちはサラダ!」
「うちはサラダ……」
 少年が噛み締めるように名前を呟く。だが、訝しそうな表情は変わる事なく、寧ろより一層眉間へと皺が寄っていく。
「誰だそれは……」
「な、なに言ってんだってばさっ! うちはサラダはうちはサラダだってばさっ」
「だいたい、うちは一族はオレ以外にはもういない」
「それ絶対なのかってばさっ」
「……オレ以外で〃うちは〃を名乗れるのは木ノ葉を抜けたうちはイタチだけだ。何しろイタチが一族郎党ことごとくを殺戮してから里を抜けてくれたおかげでな」
「え?」
「何を今更驚くことがある。お前が真実木ノ葉の忍なら耳にした事くらいはあるだろうが。〃うちは〃一族の惨劇を」
「そ、そりゃ聞いたことはあるってばさ……でも……それって」
「なんだ」
 少年が告げて来た内容はボルトに衝撃をもたらすには充分な威力を持っていた。
 ボルトは父親のナルトがアカデミー時代、常にビリをひた走っていたのとは違い、成績は常に上位だった。つまり、木ノ葉の里の歴史にも通じていたのだ。
「それとも……お前は実は木ノ葉の忍ではない、という事か? その額当て、どこで手に入れた」
 少年の持つ雰囲気が一気に剣呑になっていく。それはあまりにも露わであり周囲の温度さえ巻き込まれて数度下がったと思えるほどだ。
「わ、わ、っ……オレってば、間違いなく木ノ葉の忍だってばさっ。そのおっそろしい気を引っ込めろってばさっ」
「……」
「えっと……そ、それより……お前の名前……教えてくんねぇ?」
「……」
「お、教えて下さいってばさっ」
「人に名を尋ねるのなら先ず自分から名乗るべきなんじゃないのか?」
「え、えっと……オレは……木ノ葉丸だってばさっ」
「木ノ葉丸?」
「そ、そうっ」
 うずまきボルト、と名乗るのは拙いと咄嗟に判断し脳裏に浮かんだ名前をそのまま口にする。
「猿飛?」
「えっと、そ……あ、違っ……えっと、春巻木ノ葉丸だってばさっ」
 流石に猿飛をそのまま名乗るのは非常に危険だと判断出来た自分をボルトは褒めたい。
 少年は暫く胡散臭そうな目をボルトへと向けてはいたが、一つ息を吐くと名乗った。
「……うちはサスケ」
「っっっ!」
 何となく予測はしていたボルトだったが、実際に本人の口から直接告げられてしまうと、その衝撃たるや半端ない。
(サッ、サスケのおっちゃんの少年時代っっ)
 確かに、そう。名乗られて納得すれば、面影がある。本来は反対なのだろうが、ボルトが知る大人となったサスケの面影が、この目の前に立つ少年にはあった。
(髪の毛……こんな風だったんだ……)
 ボルトが知っているサスケの髪は長く伸ばされていて、目の前の少年のように後ろ髪が跳ねていたりはしない。
 それでも白皙の美貌は、この頃から健在であり、黒い双眸にジッと見詰められると訳もなくどぎまぎとしてしまう。
(そりゃ、サラダの事知らなくっても仕方ないってばさ……未だ産まれてないんだもんな)
 軽く眉を寄せる表情がボルトの良く知る師匠を彷彿とさせる。
「いったい、何なんだ? お前……」
 とはいうものの――。
(サスケのおっちゃんってば……子供の頃ってこんな沸点低かったんだってばさっ)
 先ほどから思うに、ボルトの知っているサスケとはあまりにも違い過ぎて眩暈を起こしそうなほどだ。
 ボルトと共にいるサスケは滅多に声を荒げる事もない。もちろん、そうそう怒りも露わにボルトへと詰め寄る事もない。
 それはボルトがサスケの娘であるサラダと同い年という圧倒的な年の差というのも関係してはいるだろう。
 いくら何でもいい年した男が娘と同い年の少年に対して怒鳴ってばかりだと格好悪すぎる。
 それにしてもボルトにとってのサスケという男は、物静かな、という印象でしかなかったのだが……。
 その印象ことごとくを裏切る少年サスケである。
「えっと……えっと……オレってば……木ノ葉の忍でっ」
「そりゃ、額当てが本物なら見りゃ判る」
(困ったってばさっ……なんって言ったら良いんだってば……ていうか、ここって過去?!)
 いくらボルトが神童と言われているほどの才能に満ち溢れており成績優秀な忍であろうとも未だ若干十二歳の少年である事は間違いのない事実だ。
 そんな十二歳の少年には今の事態は手に余った。
 つまりなまじっか知識があるために、自分が迂闊な事をしでかしてしまったら未来のサラダやサスケ本人へと悪影響を与えてしまうのではないかという畏れがじわじわと込み上げてきたのだ。
 ヘタをすれば自分自身へと返ってくる可能性すらある。
 サスケがボルトの良く知る師匠であるサスケへと至る道をボルトが壊してしまう訳にはいかないのだ。
 ボルトが泣きそうになっていると、それを敏感に察知したのだろう少年サスケの纏う雰囲気が丸く柔らかなものへと変化した。
「何、泣きそうな表情してんだ……まるでオレが虐めて泣かせたみたいじゃねーか」
 口調は乱暴でも怒ってはいない。
「べっ、別にっ……泣かないってばさっ」
「そうか、なら良い」
 す、と。
 ボルトの方へと手が差し伸べられる。
 何事? とボルトが訝っている間に、その手はボルトの頭へと到達してまるで慰めるようにぽんぽんと軽く撫でたのだ。
 驚いて少年サスケの顔を見れば軽くそっぽを向きながら照れているのか耳までが紅い。
(っっ!……っか……可愛いってばさっっ)
 何と言ったら良いのだろうか。
 ボルトの師匠となったサスケは格好良いが先にたつものの、時折微笑った表情にどきんとする可愛らしさを感じてしまったりしてボルトは密かに背徳感に呵まれてしまったりしていたのだ。
 ところが。
 この少年サスケは同年代だからだろうか、可愛いという印象の方が先にたってしまうのだ。
(うわーうわーうわー……どうしようってばさっ)
 実際はどうするもこうするもないのだが。
 少年サスケの可愛らしさにあてられてしまってボルトは身悶えする。
 そんなボルトへと訝しげな視線を向ける表情がまた可愛いと感じてしまうのだから始末に負えない。
 自分の置かれた状況も先の不安も明後日の方向へと放り投げてしまう天然の可愛らしさというものに癒やされてボルトは暫く倖せに浸ったのだった。




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